【指導内容】中世はいつから始まった?①
今回は、久しぶりに、授業に関する提案、指導内容の話をしていきたいと思います。
テーマは、中世はいつから始まった? です。
「時代区分」そのものを教材として扱う際、主に、
「鎌倉時代のはじまりはいつからか?」(鎌倉幕府の成立時期は?)
というテーマが用いられる場合が多いのではないでしょうか。
ということで、こんなテーマはいかがでしょうか?
「中世はいつから始まった?」
です。
このテーマを提案する理由としては、
①中世社会の原理について理解できるとともに、古代社会を相対的な視点で捉え直すことができる。
中世がいつから始まったかという問いに対して、論理的に説明するためには、中世社会の原理・特質を捉える必要があります。また、古代社会の原理・特質も同様に捉え、比較検討する作業が必要になります。古代社会を中世社会との比較で捉え直すことで、新たな知見・視点が発見できると思います。
②歴史学的な観点から、いわゆる「主体的・協働的で深い学び」を行うことができる。
歴史科目はアクティブ・ラーニングとあまり相性が良くない科目だと考えます。どうせ「深い学び」に結びつけるのであれば、とことん歴史を追究すべきだと思うのです。(どうも歴史の本質からズレたアクティブ・ラーニングが多いように思います。)中世のはじまりを設定する作業を通じて、歴史は「ただ覚えるもの」ではなく、「自ら考えてつくりあげるもの」だと気付くと思うのです。生徒それぞれの「史観」をつくるきっかけを生み出し、歴史は相対的なものだということが理解できる授業になるはずです。「見方・考え方」に重点を置いた授業ということになりますね。
少し余談です。
アクティブ・ラーニングと歴史を結びつけるのは非常に難しいと考えています。たしかに、アクティブ・ラーニング論者の先生方がおっしゃる内容もよく分かります。しかし、歴史は「歴史」そのものを学ぶ科目だと考えています。徹底して「知識の増強」と「歴史的思考力の鍛錬」を行うべきなんです。すでに、アクティブ・ラーニングの方法論的な議論から、内容論的な議論に移行しつつある段階だと考えており、こちら(教員)が与える、知識・概念・視点の質、問いの質が問われていると思います。
さて、話を戻します。
現在では、社会経済史ないし土地制度史の観点から、荘園公領制の成立をもって、古代から中世の画期とするような記述が一般的になっています。
とはいっても、一昔前は、武家政権の成立をもって中世とする考え方が一般的でした。
日本の近代歴史学の中で、古代・中世・近世…という時代区分を導入されたのは、ヨーロッパの歴史学の影響によるものです。その中で、騎士の社会の特徴である封建的主従関係を、鎌倉幕府以降の武家政権になぞらえて、中世の区分がなされたそうです。
また、王朝国家体制の成立をもって古代から中世の画期とする意見もあります。
論点としては、
①政治史的な視点で捉えるのか、社会経済史的な視点で捉えるのか
②古代と中世をそれぞれどのように定義するのか
ということが挙げられると思います。
ここからは、中世社会の特徴と考えられるものを取り上げていきます。
(①王朝国家体制)
③権門体制(イエの確立)
④公武二元的支配体制
⑤式の体系
(⑥武家政権の全国的支配)
ただし、このテーマ、非常に難しい。①〜⑥まで特徴を挙げてみましたが、とにかく内容が重すぎる…
普段の授業の中で、こういった内容に触れつつ、鎌倉時代から室町時代のあたりで、少しこういった内容をやっていくのがいいのかなと思います。あと、生徒の学力レベルがそこそこに達していないと、現実的には難しいテーマだとも思います。
次回は、①〜⑥について、個々の内容をもう少し掘り下げていきたいと思います。